救急医の目線(犬) 犬のあれこれ

犬のてんかん発作について 〜まずは落ち着いて〜

結論:飼い主様が落ち着くことが何よりも重要です

何よりもお伝えしたいこと。

それは、飼い主様のあなたが、「まずは落ち着いていただきたい」ということに尽きます。

以下にその理由を解説します。

とても重要なポイント

発作は、抱っこしようが、撫でようが、声をかけようが、何をしようが止められません。

自然に止まるのを待つか、薬で止めてあげるかの2択です。

目の前で始まったてんかん発作が「すぐに止まってくれる発作」なのか
「薬を使わないと止まらない発作」なのかは誰にもわかりません。

自然に止まってくれれば良いですが、全く止まらない可能性があることを知っておいてください。

では、どうしたら良いの?

てんかん発作が始まったら、まずはご自身が冷静になってください。

こころを落ち着かせながら、どんな症状なのか様子をみつつ、
すぐにでも動物病院に行ける心の準備と物理的な準備をしてください。

5分経っても止まらなければ
病院へ行く準備を開始しましょう。

診察券はありますか?

キャリーバックはありますか?

現金ないしはカードはありますか?

可能であれば直近の血液検査の結果などを準備してください

10分経っても止まらなければ
動物病院へ連絡してください

事前に動物病院へ連絡しておくと対応がよりスムーズになります!

動物病院の受け入れが可能であれば、安全に気をつけて動物病院へ行きましょう!

とは言え...

じつは、上に書いたのは
『てんかん発作』の
『全般発作』という状態
を想定して書いた対応です。

ですが、みんながみんな
『全般発作』という状態
ってわけではありません。

『全般発作』以外に
『焦点発作または部分発作』という状態
もあります。

ややこしいですね。
以下に『全般発作』と『焦点発作/部分発作』について
詳しく解説します。

『全般発作』と『焦点発作/部分発作』

『全般発作』の症状について簡単に説明すると…

手足が伸び切って(強直性けいれん)

ガタガタ震えて(間代性けいれん)

意識が無くなって

大量のヨダレが出て

場合によっては便や尿を垂れ流して

誰が見ても(仮に小学生でも)『発作だ!』
って言える症状です。


それに対して、
『焦点発作/部分発作』の症状は…

顔の一部や足がピクピクプルプルしている

意識がある

呼びかけには応じる

ただし、上手くリアクションが出来ない

正直、言葉で説明することが非常に難しい症状です。

『全般発作』と『焦点発作/部分発作』で何が違うの?

大きく異なるのは意識が有るか無いか。

「全般発作」中は意識がなくなるので、基本的に呼びかけには応じません。
発作が終息すると(ダイナミックなバタバタなどが終わること)、徐々に意識が戻ってきます。

それに対して、

「焦点発作/部分発作」中は、意識があり、呼びかけにも反応はします。
しかし、反応はできるのですが、うまく行動に表せない状態になります。

何だかいつもと様子が変で、動きたいのにうまく動けない状態です。
遠くから見てもわかるほどのガクガクブルブルバタバタは起こしません。

てんかん発作が落ち着いた後は...

多くのケース、全般発作のダイナミックなバタバタが終了(終息)すると、
その後30分から1時間程度は、

興奮状態で落ち着きがなかったり

ハァハァしていたり

フラフラ歩き回ったり

吠えたり

する事が多いです。

中には、

横たわったまま、手足を、泳ぐような自転車を漕ぐような動き

すなわち「遊泳運動」という症状を続けるケースもあります。

遊泳運動に関しては、飼い主様としては心配されるとおもいますが、
現場の救急医目線で言うと、

様子見を推奨しています。

様子見で、しばらくすると落ち着いているケースが多いと思います。

しかし、中には「てんかん発作再発」の可能性もあるので、完全に安心してはいけません。
ここらへんの判断はとても難しく、
実際のところ、正解は無いと考えます。

てんかん発作中に、ココロの余裕があれば

もし、ココロの余裕があり、複数の人間がてんかん発作を確認している状況であれば、

可能であればどなたか動画を撮っておいてください!
スマホで十分です

顔のアップと全体像が写るように2パターンを撮影

していただけると、とても参考になります。

しかし、

絶対に動画を撮ることを最優先にはしないでください!

よく様子を観察していただき、

泡で口の中が満たされて呼吸困難になってないか

ドタバタして頭や体をぶつけないか

などの二次災害が起こらないように
介助することを優先してください。

てんかん発作に関連する良くない状況

二次的な熱中症

え?熱中症?

って思う方がほとんどだと思います。

ですが、実際のところ、
様子を見すぎているうちに体温がどんどん上昇し、
気づいたときには二次的な「熱中症」の状態になっていることが
かなり多くあります!

動物病院に到着時、発作も完全に収まらずに

体温が40℃を超えていること多いです!
(ちなみに正常な体温は37℃台前半くらいから38℃台後半くらい)

犬種や発作の程度にも依りますが、
30分発作が止まらないと熱中症のリスクが高くなる
考えてもらって良いです(経験談)

様子を見すぎて取り返しがつかなくなる
(脳のダメージが残ってしまう)なんてこともあるので、
悩むくらいなら早めに動物病院へ駆け込みましょう!

その際、できれば動物病院受診前に1本電話しておいて、
これから向かう旨を伝えておけると対応がスムーズとなることもあります。


「群発発作」や「重積発作」

てんかん発作の回数による分類

単発性発作:初めての発作を1回だけ起こした状態

再発性発作:発作を2回以上起こした状態

群発発作:1日に2回以上の発作を起こした状態、数日にわたる場合が多い

重積発作:発作からの回復がみられないまま次の発作を繰り返す状態
てんかん発作の中で一番危険状態
初めて起こした発作からてんかん重積状態になる場合もある

てんかん発作は短期間(数十分・数時間・1日・数日)の中で複数回起こることがあります。

イメージとしては、脳内で電気がバチバチしている状態です。
発作が次の発作を誘発します。
ですので、なるべく発作を1回で終わって欲しいですよね。

発作が落ち着いたらそれはそれで良いのですが、
「繰り返す可能性が高い」ということを認識してください。

もちろん生涯で一度きりの子もいますが、

目の前で初めて起こったてんかん発作が、
「これから何回も続くてんかん発作の1回目」ということも十分に考えられます。

大事なことは...

今後もてんかん発作が起こる可能性が十分にある

てんかん発作が起きてしまったら、冷静に状況を観察し、
二次災害が起こらないように補助する

すぐに止まらない可能性を考慮しつつ、
動物病院へ行く、心の準備と物理的な準備をする

目の前のてんかん発作が幸いに落ち着いても、
今後再度繰り返すことがあるので、
なるべく早く主治医の先生と今後の方針について良く相談する

ご自身、ご家族で「発作」についての正確な知識を得る努力をする

なんだかんだ大切なことばかりですね。

物理的な準備としては、

病院へ向かうための手段(車、タクシーなど)の確保

その時間に対応可能な病院がどこにあるかの把握

※かかりつけ病院が
まだ開院前、昼の手術中、診察終了後、休診日の可能性があり、
対応困難なケースも想定されます。

日中であれば近くの病院や、時間帯によっては夜間救急病院の受診も検討しなければなりません。

また、救急病院もすぐにお受け入れできないケースも多々ありますので、
第2、第3の救急病院の場所と電話番号、対応可能時間を調べておくことをオススメします!!

以上、参考になったらウレシイです。


あとがき

初めててんかん発作を起こしたワンちゃんネコちゃんの飼い主様には、
上の内容をほとんど余すこと無く常にお伝えしています。

診察中は、多くの飼い主様に極力わかりやすくお伝えするよう心がけており、
幸いなことにウンウンと頷いて納得してお帰りいただけます。

しかし、あまりにも情報量が多いので全ての内容を完全に覚えきることは不可能です。

ですので、発作に限らずですが、
☑なるべくご自身で色々な情報をご覧いただくこと
☑知識を得ていただけること
が本当に重要なことと考えます。

でも、言うは易し行うは難し。

わたしも獣医師として飼い主様へ色々な情報をわかりやすくお伝えするのに、
本当に苦労しました。いや、いまも苦労し続けています。

わからないことがあれば、ドンドン主治医の先生に相談してください!

もし、万が一、うまく理解できない時は、わたしにご相談ください。
可能な限りわかりやすく説明させていただきたいと思います。

ただし、基本的には「診察」していない状況で、
第三者であるわたしの言葉を完全に鵜呑みにしないでください。
あくまでも客観的なアドバイスと捉えてください。


それでは良い一日を!

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