はじめに
初めての猫との生活。
それはあなたにとって楽しみな日々の始まりですか?
それとも少しだけ不安の混じる生活のスタートですか?
どちらにしても、動物の救急医であるわたしから、あなたにひとつだけお伝えするとしたら、
『楽しんで!』
ただそれだけ。
しかし、楽しむためには多少の努力や知識も必要になってきます。
この記事では、そんなあなたへ向けて、子猫の時期の育て方とその後のケアについてご紹介します。
・屋外で生まれた子猫を保護する
・ペットショップやブリーダーから購入する
・知人から譲り受ける
このような形で子猫を迎えることが多いかと思います。それぞれのケースに合わせた具体的な育て方もお伝えしますね。
子猫の時期の育て方
屋外で生まれた子猫を保護するケース
屋外で生まれた子猫を保護する場合、いくつかの注意点があります。
まずは健康チェックです。野外で生活していた子猫は、感染症や寄生虫を持っている可能性があるため、早急な診察を推奨します。
特に冬場に生まれた子猫は、過酷な寒さの影響で弱っており、いわゆる猫カゼにかかっていることが多い印象です。
くしゃみ・鼻水・目やに・涙の症状があれば必要な治療を行い予防接種を受けましょう。
次に、子猫が安心して過ごせる環境を整えることが大切です。特に冬場は暖かく、寒さをしのげる場所を用意してください。また、栄養補給も重要です。ミルクや離乳食を与え、子猫の成長をサポートしましょう。
生後数週間のうちは可能であれば食事は小まめに2−3時間毎に与え、消化吸収しやすいものを選ぶと良いです。
何を与えたら良いか分からなければ獣医師に相談してくださいね。
ペットショップやブリーダーから購入するケース
ペットショップやブリーダーから猫を迎える場合、すでに最低限の治療をされているため、重度の体調不良の状態でのお迎えということはほとんどありません。ただし、少なくとも1回以上の生活環境の変化があるため、それまで体調良好であったとしてもお迎え後に体調悪化するケースもありますので、注意は必要です。
新しく家に迎える前に、猫が快適に過ごせる環境を整えます。猫用のベッド、トイレ、食器皿は準備しておきましょう。これらは猫が新しい環境に早く慣れるための助けとなります。
できればお家に来た最初の数日は、猫にとって静かで安心できる時間と場所を提供してください。
たくさん構いたくなる衝動に駆られると思いますが、新しい環境に対して不安を感じることも多いので、無理に抱っこしたり触ったりせず、猫が自分のペースで環境に慣れるのを待ってください。猫がリラックスしてきたら、少しずつ構ってあげてください。
食事も重要なポイントです。ペットショップやブリーダーで与えられていたフードを最初は引き続き与え、新しいフードに移行する際は少しずつ混ぜて与えます。1週間くらいかけて徐々に割合を変えていきましょう。急な食事の変更は消化不良を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
知人から子猫を譲り受けるケース
知人から子猫を譲り受ける場合、一般的に2つのケースがあります。
ひとつは、知人の自宅で産まれた子猫を譲り受けるケース。
もうひとつは、知人が外で保護した猫を引き取るケースです。
いずれにしても、子猫の性格や習慣について事前に情報を得ましょう。
具体的な食事内容、トイレの様子、特有の行動パターンなどを聞いておくと、新しい環境への移行がスムーズになります。
新しい環境に対するストレスを減らすため、最初は知人の家で使っていたタオルやベッドを持ってくると良いでしょう。食事に関しては、知人から譲り受けたフードを最初はそのまま与え、徐々に新しいフードに移行します。食事の変更は急に行わず、少しずつ混ぜて与えることで消化器系への負担を軽減させてください。
猫との楽しい生活を送るために
食事と栄養管理
猫が健康で元気に成長するためには、適切な食事と栄養管理が不可欠です。
以下に子猫の成長に合わせた食事の参考例を示しました。長引く下痢や、発育に少しでも不安を抱える場合は、様子を見すぎずに獣医師に相談してください。
成長段階 | 食事内容 | 詳細 | 食事の回数 |
---|---|---|---|
生後1週間~4週間 | 子猫用ミルク | 市販の子猫用ミルクを専用哺乳瓶で2~3時間ごとに与える | 2~3時間ごと |
生後4週間~8週間 | 子猫用ミルク+離乳食 | 子猫用ミルクにウェットフードを少量混ぜてペースト状にする。新鮮な水も用意 | 3~6時間ごと |
生後8週間~12週間 | ウェットフード+ドライフード | ウェットフードの量を増やし、少量のドライフードを混ぜる | 1日3~4回 |
生後12週間~半年 | ドライフード中心+ウェットフード | 子猫用の栄養バランスの取れたドライフードを中心に、ウェットフードを併用 | 1日2~3回 |
食事の頻度は重要です。子猫のうちは一日に複数回、少量ずつ食べさせる必要がありますが、成猫になると一日二回の食事が一般的です。
水分補給も忘れずに、常に新鮮な水を用意しておきましょう。水分摂取量が少ないと尿路結石などの問題を引き起こすことがあります。
トイレ
猫は本能的にキレイ好きな動物ですので、トイレのトレーニングは比較的簡単です。
- 猫砂かペットシートか
本能的には猫は猫砂でトイレをすることが好ましいですが、生活環境等によってはペットシートでも構いません。
猫砂であれば無香料で、柔らかいものを選びます。子猫のうちは足に優しい素材がおすすめですが、大人になると掘り甲斐のある大きい粒を好む猫もいます。 - 場所決め
静かで落ち着いた場所にトイレを設置します。頻繁に人が通る場所や騒がしい場所は避けてください。 - 子猫をトイレに誘導する
食事の後や目覚めた直後など、自然に排泄したくなるタイミングでトイレに連れて行きます。
トイレの砂を軽くかき混ぜるなどして、興味を引くようにしてみてください。 - トイレを使うように促す
子猫がトイレを使ったら、優しく褒めたり、軽く撫でてあげるなどが効果的です。
最初のうちはトイレを使わなくとも、根気よく何度もトイレに連れて行ってみてください。 - トイレの清潔さを保つ
トイレは毎日掃除し、清潔を保ちます。汚れたトイレは子猫が嫌がる原因になります。
定期的に砂を全て入れ替え、トイレ自体も洗浄します。 - 個数
トイレの数は、猫の数+1個が好ましいです。いつでもどこでもトイレに行ける環境が良いですね。
グルーミングと日々のケア
猫の健康と美しい毛並みを保つために、定期的なグルーミングは効果的です。子猫のうちから慣れさせておくと良いでしょう。
短毛の猫は週に一度程度のブラッシングで十分ですが、長毛種の猫はできれば毎日のブラッシングが推奨されます。
ブラッシングは毛玉の防止や皮膚の健康維持に役立ちます。
爪切りも忘れずに。ただし、初めてでは、どこまで切ってよいか分からないと思います。初めての爪切りは獣医師かトリマーさんにさん教わってください。
爪を切らないまでも、普段から足先・指先を触って慣れさせておくことはかなり大事なポイントです!
日常的な健康チェックに関しては、目や耳、歯の状態を定期的に確認する習慣をつけておけるとよいですね。
人間側が早期に異常を発見できる期待度が高くなることと、猫も触られ慣れていることは大きなメリットになります。
健康管理と健康診断
猫の健康を維持するためには、定期的な健康チェックと予防接種が欠かせません。獣医師と相談して、ワクチン接種や駆虫薬のスケジュールを立てましょう。また、定期的な健康診断を受けることで、早期に健康問題を発見し、対処することができます。
以下の記事も参考にしてみてください!
猫の健康診断についてはこちら
猫のワクチン接種についてはこちら
問題行動
猫が見せる問題行動には、爪とぎ、噛みつき、猫パンチなどがありますが、これらの行動には必ず原因があり、それを理解することで適切な対処が可能となる場合があります。
爪とぎは本能的な行動なので、家具を傷つけないようにするためには、爪とぎ段ボールを用意しましょう。
噛みつきや猫パンチの対処は実は困難なことも多いです。
特に屋外で生まれた子を保護した場合には、なおさらです。
野良猫時代に、母猫から「人間は怖い」という認識を刷り込まれている猫は、時間をかけてゆっくり丁寧にその誤解を解いてあげなければなりません。
ですので、初期のうちに無闇に手出しして、怖い思いをさせるのは得策ではありません。
おもちゃなどを有効に使いストレスを発散させつつ、食べ物を与えながら「人間は危害を与えない」という認識をつけてあげることが、極めて大事になります。
おわりに
新しい猫との生活は、たくさんの喜びをもたらします。
わたしもいままで15匹以上の猫たちと暮らしてきましたが、みな個性にあふれて最高のパートナーたちでした。
人間も十人十色であるように、猫たちも十にゃん十色。しっかりとした準備とそれぞれのキャラに合ったケアが必要です。このガイドを参考にして、猫との楽しい生活を築いてくださいね。