「食べたそうな顔をしていたから、つい…」
「一瞬の隙にやられてしまって…」
実は、こんな何気ない思いやりや、ふとした瞬間の出来事が、大切な家族である愛犬を危険な状態に陥れてしまうことがあります。
こんにちは。動物救急医のSohey(ソーヘイ)です。
夜間救急の現場では食べ物の誤食、特にタマネギ類の食材を誤って与えてしまったという相談を多く受けます。
そこで今回は、身近な食材として使われる「タマネギ」や「ニンニク」や「長ネギ」、そして意外と知られていない「ブドウ」や「レーズン」の危険性について詳しく解説します。
▼犬の中毒に関する連載記事
第2回:タマネギ、ニンニク、ブドウの影響(本記事)
第3回:家庭内の意外な危険物質(予定)
タマネギ・ニンニク中毒
なぜ危険なのか?

タマネギに含まれる有機チオ硫酸化合物というものが、犬の赤血球に酸化的ダメージを与え、ヘモグロビンと酸素の結合を妨げます。
これにより、重度の貧血を引き起こす可能性があります。
この危険性は、タマネギだけでなくニンニク、ニラ、長ネギなど、全てのネギ類に共通しています。
中でもニンニクは、タマネギや長ネギの約3~5倍の毒性を持つとされており、特に注意が必要です。
また、柴犬や秋田犬は、この成分に対する感受性が高いという報告があり、少量でも中毒を起こす可能性があります。
加熱調理しても毒性は失われません。
むしろ、スープや煮込み料理では成分が濃縮される可能性があり、より危険な場合もあります。

タマネギ・ニンニク中毒の症状
以下の症状は誤食から数日して起こることもあります。
・血尿(気づきやすい症状)
・元気消失
・食欲不振
・粘膜が蒼白になる
・嘔吐
・下痢
・呼吸が早くなる
危険な摂取量の目安
【体重5kgの犬の場合】
食材 | 中毒の可能性がある量 | 重症化する可能性がある量 |
---|---|---|
タマネギ | 75-150g | 150g以上 |
ニンニク | 25-75g | 75g以上 |
長ネギ | 25-50g | 50g以上 |
※これはあくまでも目安です。個体差や犬種により、少量でもより重い症状が出ることがあります。
※ニンニクはタマネギ、長ネギと比べ毒性が強く、重篤な症状を引き起こす可能性があります。
※タマネギ1個の重さは、大サイズ(L):約200-250g、中サイズ(M):約150g、小サイズ(S):約100gです。
※一般的なニンニク1片の重さは約5-10g程度です。
※長ネギの場合、中毒の可能性がある量は長ネギ半分程度に相当します。
ブドウ・レーズン中毒
なぜ危険なのか?

ブドウ中毒の正確な原因は未だに特定されていませんが、果肉に含まれる有機酸(酒石酸)が関与していると考えられています。
これにより急性腎不全を引き起こす可能性があり、重症化すると命に関わる危険があります。
特に注意すべき点として、以下が挙げられます:
- 品種による毒性の違いはない
- 生食でも調理品でも危険度は変わらない
- 個体差が大きく、中毒量の予測が困難
- レーズンは水分が抜けて成分が濃縮されているため、より危険
よく起こり得るケースとして、
- 子どもが食べこぼしたブドウを犬が拾い食いしてしまう
- 飼い主がブドウの危険性を知らずにおやつとして与えてしまう
- パンやお菓子、シリアル、ドライフルーツミックスに含まれるレーズンを犬が盗み食いしてしまう
などがあります。
一般的な「ブドウ」として巨峰、ピオーネ、デラウエア、シャインマスカット、レーズンなどが挙げられます。
ブドウ中毒の症状
ブドウ中毒にはおおむね24時間以内に起こる急性期の症状と、24-48時間後以降に起こる症状があります。
急性期(24時間以内):
・嘔吐
・下痢
・腹痛
・食欲不振
24-48時間後以降:「腎不全」の症状として
・尿量減少
・多飲多尿(多く水を飲んで多くおしっこをする)
・重度の元気消失 など
危険な摂取量の目安
犬のブドウ中毒に関して、特定の品種における中毒リスクや致死量に関する詳細なデータは現在(2025年2月時点)のところ存在しません。
【体重5kgの犬の場合】
摂取物 | 1粒の平均重量 | 中毒を引き起こす可能性のある摂取量 | 重症化のリスクが高まる摂取量 |
---|---|---|---|
ブドウ | ー | 15~160g | 160g以上 |
レーズン | 約0.5g | 55~150g(110~300粒) | 150g以上(300粒以上) |
※個体差が非常に大きく、1粒でも重症化する可能性があります。
※体重1kgあたり3~32gのブドウ、11~30gのレーズンの摂取で中毒症状が報告されています。
※体重1kgあたり50g以上のブドウ摂取で重篤な症状が報告されています。
もし食べてしまったら
誤食時の対応について重要なポイントをお伝えします。
慌てず、落ち着いて状況を確認
- 何を、どれくらい食べたか
- 食べてからの経過時間(推定でも構いません)
- 現在の愛犬の様子
すぐに獣医師に相談してください。
- 電話でまずは状況を説明し指示を仰ぐ
- 食べた物の残りや、吐いたものがあれば撮影しておく
- 包装や残りがあれば回収し、診察時に情報を共有する
病院での処置
- 催吐処置(食べてから3時間以内が目安)
→中毒のリスクを減らすことを目的とします - 血液検査による状況確認
→貧血の有無、腎障害の有無などを確認します - 点滴治療
→嘔吐、下痢、腎不全などに対し対症療法を行います - 必要に応じて入院管理
→症状が重篤な場合は入院管理が必要となることもしばしばあります
前回の記事(チョコレート中毒とキシリトール中毒)にそれぞれ処置などの詳細を記してありますので、そちらも参考にしてみてください!
予防のポイント
以前の記事(新く家族(子犬)を迎えたあなたへ贈るアドバイス)でも触れていますが、以下の点を特に意識しましょう:
- 基本的に、犬を台所に近づけない
- 極力、犬を食卓に近づけない
- 残り物は確実に処分する(フタ付きのゴミ箱)
- 家族全員で注意事項を共有する
まとめ
タマネギ、ニンニク、ニラなどのタマネギ系の食材や、ブドウによる中毒は、予防が最も重要です。
当たり前ですが、食べられなければ何も起こりません。
しかし、誤食し中毒症状を発症してしまうと重症化する可能性が高くなります。
特にブドウの場合は個体差が大きいため、「少しなら大丈夫」という考えは非常に危険です。
誤食が確認された場合は、様子見をせず、すぐに獣医師に相談することをお勧めします。
次回は、家庭内に潜む意外な危険物質について詳しくお話しします。
洗剤や医薬品など、知っておくべき危険について解説する予定です。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!良い一日を!